大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和40年(ワ)6228号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告は中島工業所なる商号で水道工事の請負業を営むものであるが、昭和三四年頃以降病気がちのため、訴外中口俊秋に右営業全般を処理させており、右訴外人は被告の商号氏名を使用して水道工事の請負契約の締結、集金、支払、工事の監督その他一切の業務を被告に代つて行ない、そのため被告名義の記名ゴム印、印章の保管使用をも委されていたこと、ところが昭和三八年五月下旬頃被告と同業で被告から材料等の融通を受けたりしていた大東工業所こと訴外日野原金治が前記中口に対し、東京都管工事協同組合から入金の見込があるのでこれにより間違いなく決済するから一時手形を貸して貫いたいと依頼し、中口はこれを容れて、本件手形と同金額の訴外日本液脂株式会社振出の約束手形に被告名義の裏書をした上、日野原に交付し日野原は原告方でこれを割引き自己の資金として利用したこと、然るに日野原は期日に右手形の決済をしないため、原告から手形の書替を要求され、その都度中口に依頼して被告振出名義の同金額の手形を発行して貫いこれに裏書して原告に交付し、かようにして数次に亘る書替を経て 和三九年三月下旬最終的に書替えられたものが本件手形であること、中口が被告名義の前記裏書および振出をなすについては、自ら保管する被告名義の記名印並びに印章を使用し、被告においては遅くとも昭和三八年一一月下旬頃右中口が日野原に対し被告名義でした手形の融通を探知しながらこれを黙認しその後の書替をも禁止しなかつたこと、以上の事実が認定でき、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右認定事実によると、訴外中口俊秋は被告の営業に関し包括的な代理権限を与えられた事実上の支配人たる地位を有したものと認められ、取引関係のある同業者に対する融通手形の貸与およびその書替を右営業に関する行為と認めることができ被告において特にこれを禁止していたものでもないから、右中口のした本件手形の振出は、被告のためにその効力を生じたものといわなければならない。(藤野博雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!